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    aoirei0022

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    aoirei0022

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    🎩🥞幸せ月間です

    愛だとか恋だとか(1)依頼の帰り道に、ラーメン屋に寄って帰る。時々、彼の方から誘われるままそうしている。
    一人で帰ったら、レトルトか湯で混ざるタイプのココアで済ませるだろう。
    彼は家族を大切にしているし、いいのかと尋ねると決まって、いいよと君は笑う。

    「今日、結婚記念日なんだパパとママ」

    彼が、嬉しそうに言った。
    彼にとって、両親が嬉しいと思っていることは等しく嬉しいことなのだろう。

    「たまには二人っきりにしてあげないと」

    そういうものなんだな。と、彼には告げず僕は頷いた。だからといって、一人で過ごすのには時間があり過ぎて困るから、付き合ってくれというメフィストの言葉に二つ返事で頷いた。

    頭の中で、様々な理論が交差し糸のように絡まるようになって以来、始めて彼と居る時
    それが治まることに気がついたからだった。

    「僕は、少し書き物をするが君は?」

    「どうしようかな、この辺の読み終わって使わないやつ片付けとこうか」

    「助かる」

    「あとは、悪魔くんの休憩管理」

    「メフィスト休憩とは、管理されるものとは違って」

    「ばぁか、一人じゃ休んでないの知ってるんだからな」

    「一昨日は深夜に召喚(よん)んで悪かった、時計を見ていなかったんだ」

    「いーよ。べつに、だって相棒じゃん俺達」

    彼のいう定義に、僕達は納まりきっていないように思えるがそこは突っ込まないようにする。
    どうにも彼のペースに合わせるには、あまり情報量を増やさない方が良いようだ。
    実際、彼の機嫌も良かった。

    僕が、悪魔くんだからか?

    以前彼に尋ねた時、彼はとても怒っていた。と形容するには、言葉足らずだ。
    憤り、悲しみの渦に引き込まれた溺者のようだった。
    ひどく寂しそうで、思わず手を伸ばしそうになって、やめた。
    僕にその資格はない。
    僕は、一人でも平気だが、彼は違うからだ。

    「相棒、ね」

    「あ、なんだよその顔、納得してませんって言ってる」

    「言ってない」

    「言ってる」

    「君がそう思っているだけだ。実際僕は、君が
    この研究所存続の役割を果たしていると思っている」

    「経理とか接客面ではね・・・・・・」

    「僕にはできない芸当だ。それは君の才能で」

    どうでもいい言葉の応酬ができる義理の従兄弟。
    とても優しい半分人間で、半分悪魔の生まれの君。
    僕達は、義父の意地で引き合わされたにすぎない関係だった。

    僕は、理論と実践を繰り返す機械に過ぎなかった。
    義父は、あの成り立ちで僕の親になろうと懸命になってくれているが、
    それは僕という人間を特別に扱っているわけではない。

    義父は、かつてこの世界が終焉する時の救世主だった。
    今は研究者を名乗っているが、次の脅威が迫った時は必ずまた立ち上がるだろう。
    その時僕らは始めて二人で一つのものに成り得るかもしれない解までたどり着いている。
    おそらく、義父の方が先に気がついたのだと思う。僕に大魔術師ソロモンの魔法円と公式が構築する笛が反応したその日。

     あの日から全てが始まった。

    義父は、誰にも優しく穏やかで、静かな人だ。
    メフィスト2世と居る時だけ、少し元々の性格が垣間見えるが、もはや人智を超えた
    存在に近づきつつある。それが、本当に義父の想い故なのか、僕には計る術が無い。

     現代は、色々とおかしな部分が多い。
    中世魔術に躍起になる人間、悪魔と取引きしてまで栄光を掴もうとする人間、
    悪魔が人間界に暮らし、人間を育てる事例。
    一体この世界の秩序はどうなっている。
    まるで初めから、人と悪魔が共存しているようではないか。

    報告例を挙げるたびに、義父とは議論している。得論、親子ごっこに興味はないが
    それとこれらの件は話は別だ。

    「ココア、置いとくぞ」

    「ん。」

    「まだ夜冷えるだろ、半そで」

    「ああ、これは裾にインクがつくからしかたないんだ」
    この研究所はすべての電子機器が貸し出し品で、僕はタブレットには慣れているがキーボード操作が面倒で、つい義父と同じくインクとペンで紙に仮説を書きがちだ。

    「ほんと、書きはじめると止まらないんだから」

    呆れたように笑う君。
    君が笑っていると、僕は安心している。

    この理由については、まだ僕は考察したことがないけれど。
    「また充電忘れたのかよ、仕方ねえの」

    「いいんだ。電気がいつでもあるとは限らないが、インクになるものは無限に物質世界には
    存在する」

    「やめてよ、血とか使うの。こわ・・・・・・・」

    「それは最終手段だ。なんで血を出す前提なんだ、間に合わなければ空に描いたっていい」
    「え、やばカッコイイ。今度やってよ」

    「攻撃魔法だがいいのか?」

    「やっぱり無しで」

    本を閉じて、ココアを一口啜る。ペンは、滑らかに紙を上を走っていく。
    君が居ると規則正しくあるはずの心臓が高鳴る。
    頭の中の理論が、ただ静かに紙に写ってくれる代わりに、この鼓動を確かに早めてゆく。
    それを何と言う現象なのかについても明確な解答をまだ見つけてはいない。
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