Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    aoirei0022

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    aoirei0022

    ☆quiet follow

    サタいちです

    フラワーガーデン幻想の庭が広がっている。色とりどりの花や、蝶、小動物の鳴き声鳥のさえずり。
    木々の豊かな緑と、穏やかな日差しが全身を暖めるようだった。
    いくつもの構築術式を重ねてようやく形成できるものを、意図も容易く扱う悪魔
    を僕は幾数と知らない。

    ゆっくり拍手をしていると、世界の主が現れた。

    「世界の構築式が素晴らしいと思う」
    実直に感想を述べたつもりだったが、男は気に召さなかったようだった。

    「魔術も、廃れたものだな」

    「月並みな言葉で悪かった」

    「いいさ、どんな世界もキミの目には正しいものしか写らない」

    「正しさとは、何だ」

    「キミはの思う正しさが、解で良い」
    悪魔が謳うように笑う。
    どの口が正しさを説こうと言うのかと、我々人間とは違う存在だという威厳を
    意図せず示す。

    「僕が思う正しさは、世界の秩序が乱されないことだ。
    全生命体の幸福については、定義不明で現在調査中」

    花畑の中に体を沈めると、長身の男が問う。

    「しかし、キミの周りは妙に悪魔が多いとは思わないか」

    「それがおかしな点だとずっと思ってる。想定より、あの世界には
    悪魔と人間が混じりすぎている。混血も多い。
    いつからこうなのか、ずっと以前からこうなのかそれすら辿り付けていない」

    隣に男が座る。羊毛でできたスラックスは肌触りがよさそうだ。
    草の水すら構成されているのか、その質が良い生地に染みがついた。

    「王国とは」

    ぼんやりと隣の男を見ながら言う。

    「なんだろうか」

    「キミにしては、随分幼稚な質問だな」

    テノールの声が愉快そうに笑っている。

    「僕だって、どうでもいいときくらいあるさ、
    アンタと会ってる時くらい、いいだろ?」

    「求婚してやろうか?」

    「悪魔と二重契約はごめんだね。代償が大きすぎる」

    正確に言うと、三重契約なのだが、それもどのみちこの悪魔には見透かされている
    だろうから口にはしない。どうも人も悪魔も、事実を列挙されること嫌うようだから。

    「残念だ」

    「心にも無いことを言わないでくれ」

    どうも、この男の前では何かうまく話せないことが多い。
    ただ、種族も立場も関係ないこの空間が、好きだ。
    ここでこうしていると、ただの無力な人間でいられるような気がする。

    不意に、髪をなぞられる。

    「立憲君主制度だとか、帝国の定義なんかこの人類史が
    繰り返し、滅亡し、再興し、また滅びた道だろ。
    そういうんじゃないんだ、僕が目指している先は」

    「それじゃあキミ、探偵まがいの事をしていたら命のほうが先に尽きる
    んじゃないのか」

    「かもな。まあ、今はいいんだ」

    男に引き寄せられる。身を預けたままでいると今度は心臓の上をなぞられる。
    正確に言うと、服の上から肋骨の数を数えているようだった。

    「休息になったか?」

    「ありあまるほど」

    「人間の器で大儀が過ぎるところが相変わらず面白いなキミ
    それが、ソロモンの後継となる者の資質というべきか」

    「偉大な魔術師だ、彼なら天使の召喚すらできる
    後世に残すなと言われた秘術が、世間に曝け出されているが
    あれは、難解すぎて誰にも引き継がれなかった」

    「キミはその笛の適合者だろう」

    「そういうことになっている、らしいな」

    「私を召喚しようとした愚か者の横に、面白い人間が居た
    それがキミだ」

    「アレは色々間違えていたから忘れて欲しい」

    「残念ながら悪魔に忘却能力は備わってないのでな」

    言葉の応酬が好ましい。
    こういったやりとりは、普段であれば好まないが今のように
    現実から隔絶された世界でぼんやりするのは悪くない。
    ここは魔界だ。時間が流れない。
    だから悠長にしていてもいいし、ここで研究を続けたっていい。論理的とは言えない思いに、帰還を促した。

    「そろそろ帰らないと」

    「次は人間の群れでもっと欲にまみれてきてくれ」

    「もう少し、解に近づけたらな」

    起き上がると、自然界に不自然な扉が現れた。

    「魔力っていうのは、便利だな」
    「魔力量にもよるだろうな。細やかな操作をするのにはそれ相応の
    力がいる、あまり真似しようとするな」
    「わかってる」

    扉は研究所に繋がっている。
    視ると、流麗な古代ラテン語が刻まれた魔法円に変換できる。
    それ以上は歪んでしまって自分ではよく視ることができない。
    これが人間と悪魔の違いだ。

    「あまり注視すると頭痛が残る」
    男が視界を遮ってくる。

    「ああ、つい」

    「これだからキミの先行きが私は愉しみで仕方がない」

    「この心臓が誰のものになるか?」

    「もっと壮大な話が待っている」

    「まるで預言者だ」

    「悪魔も預言することだってあるさ、妄信としか言われないだろうがね」

    「だろうな」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💙👏💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works