円か「一郎」
お父さんという言葉が世界一見た目でいうと不思議な義父が、僕を呼ぶ。
本を読んでいる時に話しかけてくるなんて珍しい。
「ん?」
とはいえ、あと少しでこの本も読み終わるので別に後回しにしたって構わない。
「チェスで遊ばない?」
「なんで今言う?」
「ああー、片付けしてたら昔メフィスト2世に貰ったチェスセットが出てきてさ、
やりたいなーって思ったけどほら、他にできる人が居ないから」
「いいけど、何賭ける?」
「一郎、お金は魔界でも掛けちゃ駄目だよ」
「一言も金銭とは言ってない」
「よろしい」
「もー、どうせ新しい古文書解読で詰まったんだろう」
「うっ」
この人は、よくこうやって研究に行き詰ると子どもみたいなことを言う。見た目は僕と
3385