華胥の箱庭 2 ***
もうひとりの皆城総士と出会ったのは、今から一週間前のことだ。
その頃の総士は情報収集に明け暮れる日々を送っていた。そもそも、海神島での生活は幕開けからおかしかったのだ。目を覚ましたのは誰のものかも分からないベッドの上、すぐ傍には見知らぬ少女。全てにおいて理解が追い付かない状況だった。
自分は幼い頃に拐われた———真矢から丁寧かつ簡潔にそう説明されたが、実感なんて湧くはずも無い。拐ったのはお前たちの方だろうと反論したところで、美羽から記憶——情報の奔流と言った方が的確かもしれない——を渡され、何も言えなくなった。
このままでは埒があかないと判断した総士は、全てを自分の目で確かめることにした。図書館に行き、島を見て回り、島の中枢組織であるアルヴィスのパイロットたちと話をした。そうして過ごすこと一週間、ファフナーのことやフェストゥムとの戦いの歴史、彼らの目的である竜宮島への帰還など、多くの情報が手に入った。
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