逆光 その人は、まるで太陽だった。
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「出来ましたー!」
可能な限り元気良く叫ぶと、テントの方が賑わったのが気配でわかった。歓声に掻き消されないようにか、あるいはこちらに負けたくなかったのか、投げた声より遥かに元気な返事が飛んでくる。
「暉くんも広登くんも元気だねぇ」
「俺たちが暗い顔してたら、みんなが気にするので」
くすくすと笑う真矢から食器を受け取り、湯気が立つスープを溢さないように入れていく。あまり入れ過ぎると全員に行き渡らないので分量にも気を配らなくてはならない。せめて小さい子どもたちにはお腹いっぱい食べて欲しいのだが、そうも言っていられない状況が心苦しかった。
この旅がはじまって今日で何日になるのだろう。島を出るときから覚悟を決めていたはずだが、現実はそれを容易く上回ってくる。平穏を求める大航路は終わりの見えない旅路だった。いつフェストゥムの襲来があるか知れない緊張感、人々を守り切れるのかという不安。きちんと立っているつもりの地面は、気を抜けば呆気なく崩れてしまいそうなほど脆く感じた。それでも、心強い先輩が駆け付けてくれてからは少しばかり余裕が出来た。
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