フリー●ーメン百々人が全く気付かないうちに秀と対立する 茹だるような暑さに蒸し焼きにされながら辿り着いた315プロダクションの事務所。既に百々人は着ており、ソファでのんびりと本を読んでいた。
「おはようございます、百々人先輩。何読んでるんですか?」
「アマミネくんおはよぉ。理科っていうか、家庭科?かな」
表紙には、『硬水と軟水 出汁文化と地域特性について』と小難しいことが書いてある。そして、顔を近づけるとほんのりめんつゆの香りがした。あまり料理する人ではなかったと思うが、最近自炊してるのだろうか。
珍しいですね、と話を振ると、案外楽しいものだよ、と当たり障りない返事しか戻ってこなかった。
ああ、今日も百々人先輩からめんつゆの香りがする。
暑さ寒さも彼岸まで。街は長袖へと移り変わった。だというのに、目の前の男は素麺を美味しそうに啜っている。時期が遅い。
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