落花恋に気づいたのは、いつだったのか、もうわからない。
すべてが正しいひとではなかったけど、誰よりもそうありたいと思っている奴だった。
誰よりも怖がりで泣き虫で。恐怖で膝が笑っても、それでもその一歩を誰かのために踏み出せる、そんな勇気が好きだった。
表情がくるくる変わって、楽しいのも悲しいのも素直に表現してくれるのが好きだった。おれもそうしていいと思えたから。おれがそうできなくても、おまえが泣いてくれるから、おれも救われたんだ。
おれの手を握ってくれるのが好きだった。おれを抱きしめてくれるのが好きだった。おれがどうなってもおれであると、おれよりも信じてくれる、その優しさが好きだった。それがおれにとってどれほど嬉しい言葉であったか、ついぞおまえは気づいてくれなかったけれど。そういう鈍感さも、好きだった。
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