金の櫛3
「どうやったら俺は息ができる?」
薄暗い、殺風景な誰かの部屋の中。男が女に尋ねた。ユウはその光景をまるで映り鏡の向こうを覗くように見ているのだった。
その日、男はグラン・ジュテがどうしてもうまくいかず、飛んでも飛んでも、表現したい世界に合わず、どうしようもなく落ち込んでしまっているようだった。男が家に入るときの顔はひどい顔をしていた。男の家族も、男に対して何も聞くことなくみんな一様に下を向いてシャンデリアの明かりの元、とても静かな食事を取っていた。
ただ一人、夕食に招待されていた女性だけが男に「どうしたのか」を聞いていた。まるでおとぎ話の中の貴族の家の様な大きなテーブルで、男の正面に座っていた金髪の女性だった。ユウの立っている場所からは誰の表情も窺うことはできなかったが、男が命を吐き出すようなため息をついたことは見て取れた。
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