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    Kiki98352010

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    Kiki98352010

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    書きたいシュチュエーションだけ

    #ツイステ
    twister

    最後の夏休み
    滑らかな音色が広い部屋に響き渡る。薄いカーテンに差し込む夕日が、風で遊ばれるせいで部屋の中には不規則な光が注いでいた。白く無機質な部屋に、長い手すりがぐるりと囲み、一面の壁が鏡となって部屋の中の人物を映している。
    薄い金の髪に一筋の灰黒の髪。白い薄手のドレスが動くたびに翻り、真っ白な素足を見せていた。
    彼女は軽やかに音を奏でながら踊っていた。音に身を任せ、体の、音の、赴くままに顎にヴァイオリンを挟み、右手で緩やかに弓を動かして、左手でリズミカルに弦をつま弾く。

    漸く一曲が終わる頃に、クルーウェルは拍手をしながら部屋の中央へ歩き出した。遠慮してたわけではなかった。彼女の爪弾く音が、苦しそうに聞こえたから。

    「・・・来てたのね」

    エリザベスがヴァイオリンをおろして入ってきた俺を出迎えてくれる。「弾き続けてくれてもよかったんだぞ」と言いながらエリザベスを腕の中に閉じ込めると、静寂が世界を支配して、ここが賑やかな学校だということを忘れさせた。いつからいたとか、何故こんなところにいるとか、そう言った無粋な質問は飛んでこなかった。いつだってそうだった。無闇に人に踏み込んでこない。その代わり踏み込ませてもくれない。そんな女だった。

    「だって、貴方が声をかけてこない時ってろくなことがないんだもの」
    「失礼だな」
    「こっちの世界での礼儀を教えてくれたの、誰だったかしら」
    「教えたやつはかわいそうだな。こんなに簡単に忘れ去られるなんて」
    「そうね、代わりに謝っておいてくださる?」

    はぁ、とため息をついてみせるとどちらからともなく肩が震えた。ついに笑いを堪えきれなかった彼女が笑い声をこぼした。

    「どうしたんだ?“ジゼル”。随分と息苦しいように見えたが」

    そう言われたエリザベスはくしゃりと笑いを崩して表情を消し去ってしまった。こうなってしまった彼女にできることは少ない。昔からよく知っている、エリザベスの悪い癖だ。

    「…念のために聞くが、俺に話す気あるか?」
    「ないわ」

    いつも通りのキッパリとした拒絶。どうしてここまで拒絶するのか、その謎は15年以上解けていない。
    一度ここから追撃をかけてひどい喧嘩になった。魔法士同士の喧嘩はとにかく派手だ。もう2度とすまいと思うぐらいには。だからもうここから自分には打つ手がない。悩んでいることはないのか、うまく行っているのか、そう聞いたところで俺の聞きたい答えは返ってこないだろう。

    「どうしたの」

    はっと顔を上げるとそこにはキョトンとした顔のエリザベス。誰のためにここまで悩まされているのだろう。わからなくなってきた。

    「ねぇ、ひとつだけ教えるわ“アルブレヒト”」

    俺のジゼルがはっきりと結論を口にする。

    「私に…、努力を初めからしていない私なんかには、落ち込む資格なんかないのよ。涙を流す資格なんてないわ」
    「なら、夢を追わなかった俺にだってない!」
    かっと頭に血が昇る感覚が自分でもわかった。
    ないのだ。自分にだって。マジカルバレエの最高峰に上り詰められず、結局教職につくことになった、この俺にだって、嘆く資格はない。
    そんな俺に、彼女はいつものように「シィ」と俺の唇に人差し指を当てる。
    「何故....」
    憤る俺に、彼女は言うのだ。

    「....because I love you」


    愛しているから、と。
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    Kiki98352010

    MEMO書きたいシュチュエーションだけ最後の夏休み
    滑らかな音色が広い部屋に響き渡る。薄いカーテンに差し込む夕日が、風で遊ばれるせいで部屋の中には不規則な光が注いでいた。白く無機質な部屋に、長い手すりがぐるりと囲み、一面の壁が鏡となって部屋の中の人物を映している。
    薄い金の髪に一筋の灰黒の髪。白い薄手のドレスが動くたびに翻り、真っ白な素足を見せていた。
    彼女は軽やかに音を奏でながら踊っていた。音に身を任せ、体の、音の、赴くままに顎にヴァイオリンを挟み、右手で緩やかに弓を動かして、左手でリズミカルに弦をつま弾く。

    漸く一曲が終わる頃に、クルーウェルは拍手をしながら部屋の中央へ歩き出した。遠慮してたわけではなかった。彼女の爪弾く音が、苦しそうに聞こえたから。

    「・・・来てたのね」

    エリザベスがヴァイオリンをおろして入ってきた俺を出迎えてくれる。「弾き続けてくれてもよかったんだぞ」と言いながらエリザベスを腕の中に閉じ込めると、静寂が世界を支配して、ここが賑やかな学校だということを忘れさせた。いつからいたとか、何故こんなところにいるとか、そう言った無粋な質問は飛んでこなかった。いつだってそうだった。無闇に人に踏み込んでこない 1403

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