欲しいもの「せっかくの記念日ですもの。新しいパリュールが欲しいわ」
「この前ドレスを仕立てたばかりだろう」
「貴方、ねだられている内が花ですのよ」
甘える女の声が、バンジークスと亜双義の耳に絡みつく。
捜査の一環で訪れた高級宝飾店、店内にいた男女の会話が
耳をそばだてずとも聞こえてきたのだ。
若く美しく、下品にならないぎりぎりの色気をまとう女性。
比べると幾分年がいった、割腹のいいさぞ裕福であろう男性。
年の離れた夫婦か、愛人といったところであろう。
聞き込みを済ませ、検事局に戻る馬車に乗り込むと、
バンジークスがぽつりとつぶやいた。
「君から何かねだられたことはないな」
隣りに座る亜双義が驚いてバンジークスを見る。
一見、無表情にみえるが亜双義には少し拗ねているのだと分かる。
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