夜に震える嵐が倫敦を襲った夜。
自室で寝ていた亜双義は、若干の息苦しさに目が覚めた。
小さくて暖かい毛玉が胸の上で震えている。
息苦しさの正体はこいつらしい。
「にゃめん、どうした」
就寝の挨拶をした時には、バンジークスの寝室で
にゃんじーくすと一緒に猫用ベッドにいたはずだ。
いつものやんちゃで不遜な態度はどこへやら。
身体をかたく縮こめて、亜双義の寝間着に爪を立ててしがみついている。
顔を伏せ、耳もぺたりと寝ている。ひどく怯えているようだ。
窓を叩く雨粒は激しさを増し、強風に揺れる枝がぶつかり合い、
庭に出したままの何かが転がり屋敷の壁にあたったようだ。
「怖いことでも思い出したか?」
亜双義が優しく尋ねると、にゃめんは少しだけ顔を上げた。
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