燎原休日の昼下がり、バンジークスは自邸の一室で本を読んでいた。
そこは本来応接間だが、この時間帯、読書をするにはここが最適の陽の入り方だと
教えてくれたのは亜双義である。
従者の頃にバンジークス邸に住まい、一時は他所に住まっていたが
押しかけるように弟子入りした後、また住むようになった。
再びやって来た時、後学の為にもなると言い屋敷中を探索し
この部屋は昼寝にいい、この階段は鍛錬に使える……など勝手に判じていった。
厨房にランドリー、厩舎などにも出入りし、使用人とも親しくしているらしい。
そのため馬丁の嫁に子供が生まれるとか新入りのメイドはどこの出身だとか、
当主にまでは通達されないような情報を聞かせてくれる。
自分の屋敷のことですら、一人では知り得ないことに満ちている。
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