新しい演習候補地の視察ということで、レコベルは上官のピロと共に所属の念術士が操る大型怪蠱が引く荷車の上にいた。基地からはやや離れた位置にあるため、今夜は補給地点となる町で一泊の予定だ。周囲には怪蠱部隊が数名、同じ歩みで進んでいる。
日除けの幌に隠れた座席にはふかふかのクッションが積まれていて、夕暮れの砂地を行く蠱の歩みが起こす地響きを完全にとまでは行かずとも吸収してくれている。
「広さ、本国からの距離、補給地点、……まずまずということでよろしいですか?」
「適当に書いておけ」
運転手の気遣いもあって、報告書をまとめる筆先はなんとか文字の体を成す。ありがたいことだとレコベルは思いながら、そうそうに雛形(テンプレート)に沿って視察の結果をまとめ上げた。
2009