そのお見合い、ちょっと待った!「他に頼るアテもない。できる限りの礼もするつもりだよ」
「本当にわたしで大丈夫? あんまり自信ないんだけど」
「特別な準備は何も必要ない。普段通りで大丈夫だ」
「うーん……」
――恋人のフリをしてほしい。わたしの好きな人からの頼み事だ。他の人なら好きな人がいるからと即答で断ったけれど、彼からの頼みでは断りにくい。でも、あくまでこれは仮の恋人だ。
最近、彼は親戚にお見合いを勧められることが増えたのだという。しかも中には何度断っても諦めないお節介な人もいて、無理矢理縁談の話を進めようとしているのだとか。あまりにもしつこいものだからつい、「恋人がいる」と嘘をついたらしい。そこから先は転がるように話が進んで……。
6331