かえりはいちご味「はぁ?まだ帰ってないの」
報告した伊地知は目線を泳がせ、僕の青い目玉を見ようとしなかった。
「帰りましょうと促したのですが、ここに残ると」
「伊地知さぁ、ソレ眠らせるくらいできるっしょ。今でも」
「ですが。すみません…」
僕が今でだって不定期だけども稽古してやってるんだ。見つかると七海にも硝子にも怒られるが、伊地知の術はパーペキだ。
「で?あいつ何してんの」
堪能していたチュッパが可哀想にバキバキ音を立てて噛まれていく。
あーぁ、僕のプリン味。次はいちごが食べたい。
「洗い流すんだと、近くの水道から水を運んでいます」
「あらう?」
「あそこにひとり居ました、一般人の痕を洗っています」
来たときは早朝だったのでここまで蝉はうるさくなかった、なんて言えば「最近の蝉はいつでも鳴いてますよ」とか言う。うざいったらないよね。
1934