(千秋は路地裏で重傷を負って倒れている鉄虎を見つける。名前も知らない男は今にも息絶えそうで、千秋は鉄虎を大急ぎで屋敷に連れて帰り手当てをさせた。)
「ここが……天国ッスか?」
「よかった……! 目が覚めたんだな!」
医者は目を覚ますかは今日が峠だと言っていたが、無事その瞳が開かれたことに安堵の息を吐く。まだ少し夢心地なのか、少年はあちこちに視線をさ迷わせる。やがて琥珀を思わせる瞳が静かにこちらを向いた。
「あんたは……それよりここは……」
「おっと、まだ動くんじゃないぞ。傷は全然塞がってないからな。……俺は守沢千秋。ちなみにここは天国じゃなくて俺の屋敷だ」
正しくは俺の家系のものと言うべきだろうが。少年は2、3度瞬くと、ようやく状況を理解し始めたようだった。
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