「だから駄目ッスってば!」
慌てて腕を伸ばしてその口に手のひらを押し付ければ、空色の瞳が恨めしそうに俺を見た。
数ヶ月前から、俺は翠くんと『お付き合い』をしている。
告白してきたのは彼の方だった。まさか翠くんに思いを寄せられてるなんて夢にも思っておらず――忍くんにそれを言ったら鈍感だと呆れられたけれど――今後のアイドル生命も含めてどう返事をするべきか散々悩んだ。でも、結局伸ばされた手を取ったのは俺も彼のことが好きだったからだ。
付き合ったところで翠くんはデートとかあまり好まなさそうだったし、そう変わらない生活が続く――と思っていたのだが。彼氏となった翠くんは意外と積極的だった。デートどころか、手も繋いだし――キスもした。そのキスが俺の目下の悩みとなっている。
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