鍋を煮立たせ冬を討つ「はぁああ? 何だって行き成り、ちょっと、一方的に言われてもさー……オイ、いや、休みだけど、や、ちょっと待て、だから一方的に決めるなって言ってるだろうが。おーい」
携帯に向かって大声で喚きたてるのは、恋人の姉だ。リビングに居る俺と恋人とその姉が囲むのはぐつぐつと煮立つ鍋。電話に言葉を投げつける彼女を横目に彼女の弟である恋人は「良い感じに煮立ったし食い始めましょーか」と素知らぬ顔で。
「良いの?葎花さん結構ヒートアップしてるみたいだけど大丈夫?」
思わず俺は彼にそう確認すれば「あー、どうせ親だから」と鍋の中身を取り皿に盛り付けたものを渡してくる。そんな話をしていれば、電話に出ていた彼女も「一方的に言って一方的に切りやがった」と苦虫を噛み潰して更にすり潰したような凶悪な顔で弟である格臣君からお玉を奪い取るのだ。
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