Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🙏 👍 🍻
    POIPOI 139

    狭山くん

    ☆quiet follow

    2016-11-03/数少ない笹野姉弟とハナさんの話なので上げておく。

    ##笹野周辺
    ##格花

    鍋を煮立たせ冬を討つ「はぁああ? 何だって行き成り、ちょっと、一方的に言われてもさー……オイ、いや、休みだけど、や、ちょっと待て、だから一方的に決めるなって言ってるだろうが。おーい」
     携帯に向かって大声で喚きたてるのは、恋人の姉だ。リビングに居る俺と恋人とその姉が囲むのはぐつぐつと煮立つ鍋。電話に言葉を投げつける彼女を横目に彼女の弟である恋人は「良い感じに煮立ったし食い始めましょーか」と素知らぬ顔で。
    「良いの?葎花さん結構ヒートアップしてるみたいだけど大丈夫?」
     思わず俺は彼にそう確認すれば「あー、どうせ親だから」と鍋の中身を取り皿に盛り付けたものを渡してくる。そんな話をしていれば、電話に出ていた彼女も「一方的に言って一方的に切りやがった」と苦虫を噛み潰して更にすり潰したような凶悪な顔で弟である格臣君からお玉を奪い取るのだ。
    「姉ちゃん顔がヤクザ」
    「うるせぇ。格臣お前私のスケジュール漏らしやがったな」
    「……あー」
    「後で覚えてろよ」
     低い声でそう脅すように声を投げる葎花さんに格臣君は口元を引き攣らせる。一体彼女は彼にどんな無体を働こうというのか。葎花さんの纏う空気が怖くて言えない。
    「そ、それにしても過激な電話だったね?」
     この空気を打開したくて咄嗟に口に出すのはさっきの電話の話。思わず出てしまったその疑問に俺も地雷を踏んだかと固まる。
    「あぁ、実家の冬支度手伝えっていう赤紙。あー去年はスケジュール教えないでバックレたけど今年は無理だったかー格臣のせいだな。うん、格臣のせいだ」
     煮て柔らかくなった白菜を口に運びながら恨みがましい目線を格臣君へ向けて彼女はそう答える。実家の冬支度がそんなに嫌なのだろうか。首を傾げた俺に格臣君が注釈を入れるように「実家の庭、割と無造作に色んなモン生えてるから。プランター片付けて庭木縛ってついでに木も切ってって割と一日作業になるんだ。今年は姉ちゃんが来るからデカいのもやるんだろうな」と答える。
    「ウチで一番デカい木、3階建てのアパートよりデカくなってんだ。何年か前は隣の家の基礎に根っこが侵食したから盛大に切った」
     チェーンソーで。一般家庭にチェーンソーって。そう言いながら彼女は鍋をつつく。
    「……実家って市内だよね?」
    「うん、ウチからならバス1本」
     俺の疑問に軽く答える彼女は「あー、休みの日位ダラダラしたいわー」と溜息交じりに肉を食う。
    「でも姉ちゃん結局来るんだろ?」
     本当に嫌ならバックレれるのに。と格臣君もネギを口に運びながら葎花さんに言葉を投げる。
    「行くけどさー、っていうかそもそも家出て自活してる社会人の娘に「来なかったらラーメン奢らないよ!」ってどういう事なの。ラーメン位自分で買えるっての」
    「取りあえずメシで釣るのな」
    「でもコレで行かなかったら実家の蔵書始末されそうだしなー」
     あーもーめんどくさいと完全に行く事を面倒臭がっている葎花さんを見ながら格臣君も「あー」と遠い目をするのだ。
    「実家の蔵書って葎花さんの部屋既に本棚すごい事になってるよね?」
    「本棚すごい事になってるからこれ以上本が増やせないんであまり読まないのは実家に置いてある」
     主に専門書とか専門書とか専門書。と遂にテーブルに突っ伏してしまった葎花さんを見て「そんなにすごいの?」と俺は格臣君に話を振る。
    「まー凄いっすね、気になったら割と何でも読む人だから。一時期姉ちゃん古書にハマってたし」
    「この機会にこっちに持ってくるかな……いやでも多いからなぁ」
     あー、歴史ハマると本が無尽蔵に増えるんだよなーと葎花さんは突っ伏したままぼやく。ぐつぐつと煮え立つ鍋の火は格臣君がそっと消す。
    「姉ちゃんの場合歴史だけじゃないでしょ」
     格臣君は冷たくそう切り捨てて取り皿の中身を掻きこんで、鍋から具材を皿へと継ぎ足す。俺もテーブルに突っ伏したままの葎花さんを眺めながら皿の中身を口へと運ぶ。
    「っていうか姉ちゃんぼやく前に食いなよ。姉ちゃんが言い出したんだろ、もつ鍋食いたいって」
     格臣君がそう言えば、葎花さんはのろのろと状態を起こして黙々と皿の中身を口へと運ぶ。
    「そうだ、もうハナさんが行けばいいんだ」
     3人で黙々と鍋の中身の消費をしていれば、思いついたようにそんな事を口にする。
    「え、俺?どんな名目で」
    「格臣の彼氏……って言ったら流石にあの親でも心臓止まりそうだから私の彼氏って言っておけば?」
    「取りあえず姉ちゃん黙って」
     ピシャリと格臣君が告げれば「しょーがねーな」と言いながら葎花さんは腰を上げる。何かと思えば台所からラーメンを持って「さっさとシメるぞ」とその中身を鍋へと投入するのだ。
    「めんどくさいけどまぁ、1日の話だし」
    「だったら最初から素直にそう言えば良いじゃん」
    「言われたことに従いたくないお年頃なんですよ」
     俺はそんな姉弟の会話を聴きながらラーメンが煮立つのを待つのだ。

     
    ——————————————————


    笹野の本棚がすごいというか笹野家の家の中は本だらけ説。
    (2016-11-03)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator