沈黙は金なり。「テディーは居るか?」
昼も半ばになった頃、捜査係の事務所に顔を出した俺は間髪入れずにそう口にした。
「係長なら出てますよ。また何かありましたか?」
俺の問いかけに返答したのは出入り口から一番近いデスクに座っていた菱尾で。昼飯時だからか、菱尾の他にデスクの前に座る職員は居なかった。「いつ頃帰ってくるかわかるか?」と更に問いを重ねれば、菱尾は首を傾げ、奥から二人分のカップを持ってきた金髪の男が「係長なら渋い顔して出て行ったから長くかかるんじゃないかなー?」と俺と菱尾の会話に参入する。
「遅かったか……」
小さく呟いた俺の言葉に両手に持つカップの一つを「ハイ、アーンちゃんの分」と菱尾のデスクに置いていた金髪の男――アルトゥーロ・セッティマは「それ、どういう意味?」と目敏く反応を返すのだ。
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