「九郎先生、僕のこと好き?」
北村さんは、定期的に私に問う。数えたわけではないが、私の顔を見ずに言うことが多い。
「はい、とても」
「ふふっ。よかったー」
べたついたものを洗い流した私たちは、前後で並んで、浴槽に浸かっていた。
ちゃぱり。北村さんが脚を小さく畳み、背を丸めた。入浴剤で、青色に染まった水面が揺れる。海外製のものに特有の、刺激性のある香り。私は何とはなしに、彼の浮き出た背骨を人差し指でなぞった。
「あの、北村さん。よろしければ、その質問をされる理由を聞かせていただけますか?」
しばし待ったが、反応がない。言いたくないことだったのやもしれない。
「お嫌でしたら、構いません」
私が付け足すと、北村さんは、隠すほどのことじゃないしねーと独り言のように言った。彼が伸ばした脚が、私のものと触れ合う。
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