止血、説教、庇護欲「申し訳ないんだが、医者を呼んでくれるか」
依頼を終わらせて帰ってきたハリスは、軽傷かのようにそれだけ口にした。──ベストに包まれた腹から、大量の血を流して。
「キャン!」
ガーゼで強く押して止血をすると、痛いのか涙目でキュウキュウと鳴く。その声を聞いていると罪悪感に苛まれるものの、やはり怪我をしたことへの怒りが勝っていた。
「ハリス」
「ん……?」
「何故このような重傷を?」
金色の瞳は涙で潤み、痛みで揺れている。だがそれをしっかりと見つめ、問い詰めた。
「ええと……今回の依頼はホロウ内部での捜し物。なおかつそれが本人にしかわからないような特徴のため、依頼人の同行有り。ここまではいいな?」
「はい」
頷くと、ハリスの顔に少し後悔が滲む。どれに対してのものかは、わからないものの。
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