男相の霊文に裴茗が意中の女子を奪われる話。一世を風靡する傾城の舞姫が居るという。
纒足の舞姫だ。纒足で美しい舞を披露する。
さて、昨今の市井の話種は、その舞姫を羽振りのよい色男が散々口説いていることだ。
その舞姫があとほんの僅か……そよ風ほどの一押しでその色男に靡きそう、という時になって彼女の態度は翻った。色男は横から現れた他の男に意中の女の心を掻っ攫われたというわけだ。これがなかなか痛快なこと。
明姫から輝石の微笑みを向けられる相手となったのは、ある公子であった。
温かい闇のような包容力の中に、青く燃ゆる炎のような野心を灯す。
知性と品格を兼ね備えた、書生である。
豊かな財産と秀麗な美しさをその書生は持っていた。
書生は舞姫が望むものをよく理解していた。美辞麗句を弄して舞姫を籠絡したのは色男と同じであったが、書生は非常に機知に富んでいた。
4918