星呑み小話5ごろごろと、飲み込めないものがいつまでも残り続けているような。
他にどう表現したらよいのかも分からぬものが、[[rb:睲壡 > とうえい]]と名乗ることにした妖の中で燻っていた。
全てはうまくいった筈だ。己の主は幻を見ることなく――。
『いや、あれは……どうなんだろうな……』
己の本体である鏡が置かれた部屋から、庭を見る。赤い花が咲き誇る先に主の後ろ姿と、もう一つ何かがいる。何かは酷く曖昧で、人のように見えた次の瞬間には妖にしか見えない形になってしまう。鏡にすらそう映るのだから恐ろしい。
主を想うのならば、引き離すべきなのだろう。けれども、それが主の隣に居て欲しいと願ったのは紛れもなく睲壡だ。同じように間近で星を見た男の声によって、主の目以外にも映ることとなった。
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