星呑み小話:悪食塀の上で[[rb:沽猩 > かしょう]]がくあ、と欠伸をする。視線の先にいる2つの人影は、沽猩を見ることもなく本を読み上げ、書き写し、疑問と返答を繰り返している。眺めている沽猩は始まってすぐに飽きているのだが、二人は毎日のようにそれを繰り返している。
――沽猩と視線の先の1人、[[rb:一重 > かずしげ]]が暮らす町・照魔はあやかしの町である。人には見えぬひっそりと隠れた、けれど広大な町を治めるのは、[[rb:宇界地聡 > うかいちあき]]という名の人間である。町を知らぬあやかしは、必ず最初にこう言う。
「人があやかしの上に立てるわけがない。あやかしが人の下につくわけがない」と。最もな言い分である。あやかしという強大な力を持ったものが、非力な人間に従う、町という庇護下に入る必要性が見当たらない。沽猩自身も、最初はそう思っていた。
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