星呑み小話14褥で久方ぶりの夢を見ているのであろう己の伴侶をそのままして、[[rb:丹星 > あかほし]]は一人廊下を歩く。其処から見る庭は、植物なぞ一本も生えていない、石と砂で形作られたものだ。作ったものも、管理するものも生き物では無いのだから、似合いではある。只時折、それが妙に虚しいと感じる時がある。今もそうだった。恐らくこれは丹星が丹星としてある限り、つまり永遠に抱えていかなければならない感情なのだろう。
廊下を抜け、数える程しか履いたことのない草履を履く。そのまま戸をくぐれば先にあるのは閉じられた門だ。門を閉じていた閂は勝手に横にずれてごとりと落ち、これまた勝手に門は開く。それを悠々と乗り越えて、忘れ去られし戦神は久方ぶりに自らの意思で人界に降り立ったのであった。
2859