朝。
窓から差し込む日差しにぴくりと瞼を持ち上げると、目の前に、見慣れた男の顔があった。
「……」
寝ている。
色素のない髪がさらりと旋毛から垂れて、僅かに目元を覆う。前髪の隙間から覗く同じ色の睫毛は長く密に閉じた瞼を縁取っていて、すっと歪みなく整った鼻梁に、形の良い薄い唇、つるりとした肌、挙げ連ねればきりがないほどいくつもの完璧が偶然に集まった結果おおよそ欠点というものが排除された、それは、兎にも角にも綺麗な顔立ちであった。
何もこれが初めてというわけでもないけれど、何となしに、まじまじと見入る。寝ている五条はとても静かだ。規則正しい呼吸は穏やかで、凪いだ表情からはいつもの軽薄もすっぽり抜け落ちている。静謐な美貌はどこか人形めいても見えて、隙がなく、不用意には侵しがたい神聖さすら感じさせる。
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