【2020年の冬にて】◆
二〇二〇年、一二月。
世間では冬の色が濃くなり、祓い屋が拠点を構える京都市内にも雪の日が多くなり始める中、それでいても此処、「御所」の結界内は桃の花が咲き誇り、温かな気温に満ちていた。
「寒いのは嫌いではないが好きでもない。それに春の方が好きな野菜も植えやすいからのう」
幼子の姿でありながら老人の口ぶりで話す祓い屋、そして母体となる「六歌仙名家」の祖である「尸童」は、子供用のスコップを持って御所内の裏手側へ構えている畑の土を掘り返していた。
「そうは言っても、此処で育つ野菜などは気温、季節、関係なく育つのでは?」
「も~紅月ちゃんは趣がないのう~。例えそうだったとしても『口にしない』のが『ナウ』なんじゃ」
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