指先の熱を分け合ってクリスマスイブの夜。
往来の激しい大通りの隅で、HiMERUはスマホ片手に待ち合わせ相手を待っていた。
ふと顔を上げるとカップルや友人同士が楽しそうに横を通り抜けていく。
スマホのメッセージの着信音が鳴り、辺りを見回す。待ち人が近くまで来たようだった。
少し先に目当ての人の姿を確認して、心なしかほっとする。
見慣れたスーツ姿にロングコート。いつもは後ろでひとつに結ばれている髪が今は下ろされている。それだけでも印象は違い、同じスーツ姿でも体温が上がるのを感じた。
「あんずさん」
「HiMERUくん!」
名前を呼ぶとぱっと表情が明るくなって、駆け足で向かってくるその顔に口角が上がる。
「お疲れさまです。すみません、分かりにくい格好で」
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