諦めきれないホルマジオは悪魔、それも淫魔と呼ばれる種族だった。淫魔は食事をしない。人の、特に女性に取り憑き、交わることで精気を吸い取って生きていた。クラブやバーに赴いて、その場で意気投合した相手を見つけて、相手の家で行為を済ませ、寝ているところを追加で吸う。もちろん、空になるまで吸い取って殺す、なんてマネはしない。かつてはそんな淫魔もいただろうが、翌日相手が目覚めた時に「少しつかれた」と感じる程度で満足だし、そもそもそんな殺人事件が流行っていると噂になれば警戒されてしまい、ターゲットは見つけにくくなるだろう。
そうやって慎重に選別していても、食事にありつけないなんてことはなかったのだが。
この日は不運が続いていた。少し空腹を抱えていたが、油断してダラダラと獲物探しをサボっていたつけが回ってきたと言える。
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