品田くんの目が見えなくなる話(後編)品田が人前に出たくないと言うので、綾小路は親に頼んで医師を自宅に寄越してもらった。父の友人だという医師は
「詳しく検査しないとなんとも言えないけどねえ」
と言いつつアレコレ調べたあと
「たぶん目自体には問題はないと思うよ。いろいろなストレスで目が見えなくなったという症例もあるからね」
「これ、治ります?」
品田が不安げに自分の目を指差すと
「一時的なものだろうけど、いつ治るとは確約できないな。仕事は?しばらく休めない?」
「まあ…見えないと原稿も書けませんしね…」
あの手記の話は思い出したくなかったが。原稿も何もあれで関係は切れてしまっただろうな、と品田は諦めた気持ちでいた。
「まずは静養して、栄養を取ることだね。それでも治らないなら私の医院に来なさい。車をやるから」
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