祈り、あるいは傲慢 ランク戦ルームの個室。その一画のドアが、無機質な音を立てて開く。一歩二歩と木虎が歩を進めれば、ベイルアウト用のベッドに倒れているのが視界に入った。
「もう今日はやめましょう、草壁さん」
そう言って木虎はベッドの傍らへと歩み寄る。先ほどまで何度も個人戦を繰り返した相手――草壁早紀は、ず、と鼻を啜った。掌で覆った顔は指の隙間からでも見て取れるほどに、目元は赤く腫れ、涙の跡がいくつも頬を這い、きっちりと結わえられていた二束の髪は見るも無惨で、奔放に乱れている。
強く結ばれた唇は、嗚咽を抑えきれていないのか、時折ひくひくと引きつった。それを見て木虎は浅く息を吐いて、草壁に背を向けるようにベッドの空いたスペースに腰を下ろす。そして持ってきていた自身の鞄を開いた。目的のものを求めて中を探ると、どん、と軽い衝撃が木虎の手を止める。
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