反復学習「トーノっ、ちょっといい?」
隊室のドアをくぐると、ワントーン高い声色で神田さんが俺を呼んだ。俺があからさまに顔を顰めると、神田さんの向かいに腰かける王子先輩がからからと笑う。
「……なんすか」
不躾な言い方になるのも無理はない。この人が俺をそうやって呼ぶ時は、大抵ろくな用事じゃないからである。
さあさあこっちにおいでよ、なんて促されて誕生日席のように配置された椅子に座った。室内を見回しても、弓場さんもののさんも帯島もいない。絶望的な状況だ。
「僕とカンダタ、どっちが好き?」
ほら、面倒くさい。いつも通り笑顔の王子先輩と、あまり見せないにこやかさの神田さんと、二つの視線が俺に向く。つまりは二人がかりで揶揄おうというのだ。
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