いくら魔法使いは魔法で体感温度の調節ができるといったって、夏の日射しはきついものがある。普段よりも喉の渇きが早い気がして、キッチンからもらってきた飲み物もすでに底をついていた。
魔法を使ってコップを満たすことも考えたけれど、この時間にはまだネロがキッチンに居るだろうと、ファウストは部屋を出た。
しっかりと昼食も摂ったというのに、ネロの顔を思い出してしまうとどうにも小腹が空いたように感じるのは、しっかりと餌付けされてしまっている証拠のようで、少しばかり気恥ずかしい。
けれど、あの男はなによりもそれを嬉しそうにするのだから、悪くはないな、とも思う。
ファウストが、何かを作って、とねだった時のネロの顔は、こどものように無邪気なようでいて、こちらを甘やかそうとする年上の余裕も含んでいる。
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