羽化五時五十九分、五条の意識は覚醒した。ナイトテーブルに置いているスマートフォンの画面をタップし、59の数字を確認する。寝返りをうって目を閉じた。目覚まし代わりのアラームが鳴るまであと一分。雨の音がする。
顔を洗って身支度を整えた。靴紐を結び、フードを被って玄関を出る。ストレッチをして走り出す。雨は小降りだが泥濘具合を見るに昨夜から降り続いているらしい。
朝食はどうしようか。店に入るか、帰って作るか。ベーカリーショップの前で足を止めたが、レインジャケット脱着の面倒臭さを思ってやめた。帰って焼こうと決める。明日はあれにしようとガラス越しのクロワッサンに定めていた視線を戻し、ジョギングを再開した。心なしか雨脚が強くなってきた。
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