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     ※ 百合営業をしている雨玄(付き合っていない)
     ※ 女体化による一人称や二人称の変化。

    ##百合営業をしている雨玄

    無題「あれも事務所の方針なワケでしょ? ちゃんと手綱握っとかなきゃダメだよ。芸歴はあっちの方が長いと言っても、葛之葉さんの方が年上なんだから」
    「お心遣いありがとうございます」
    「やりにくいこととかあったら言ってよー。俺、葛之葉さんの為なら頑張っちゃうからさ。勿論、Legendersさんにお願いしたい仕事もあるからさ。今度、いろいろお話しさせてよ」
     葛之葉は笑みを崩さず、再度ありがとうございますと頭を下げる。「プロデューサーに相談してみますね」と続ければ、男は明らかに興を削がれた表情をした。
    「あー……そう。じゃあ、プロデューサーさんにもよろしく言っといて」
    「はい、伝えておきます。今日はお疲れ様でした」
     男が去るのを見届けてから、葛之葉は小さく息を吐いた。
     彼は黒野と葛之葉がMCを任せてもらっている番組のプロデューサーだった。業界にいる年数が長く、やり手らしいが、葛之葉のことを気に入っているようで、収録が終わった後に毎回あの様に話しかけてくる。これさえ無ければ良い仕事相手だと評価していただろうと、葛之葉はまた息を吐いた。加えて黒野と行っている百合営業、引いては黒野自身のことも気に入っていないようで、何かにかけて葛之葉の口から愚痴を吐かせようとするので参っている。葛之葉は早く黒野に会いたいと、彼女が待っている楽屋へ続く廊下を急いだ。

     一方、黒野は楽屋の隅で物思いに耽っていた。撮影が終わったあと、番組のプロデューサーに声を掛けられていた葛之葉のことを思い出す。葛之葉が彼に気に入られていることに気づいけないほど、黒野は鈍感ではなかった。仕事の話だと誤魔化されているので、彼との話の内容を聞くことができないでいる。そのことも黒野を焦燥させる十分な理由だった。
     携帯電話でセットしていたアラームが鳴る。黒野は緩慢な動作でアラームを止めると、衣装から私服に着替え始める。撮影後の葛之葉と番組プロデューサーとの会話が常態化したので、黒野は彼女が楽屋へ帰ってくるまでの間に平静を装えるようになった。
     私服に着替え、楽屋へ帰ってきた葛之葉に「おかえりなさい」と声をかけ、葛之葉が着替えるのを待ってから2人で事務所へ帰る。カメラの前とやることは変わらない。むしろ、カメラがなければ2人の間にはなんの設定も無いのだから、黒野がやるべきことは殆どなかった。
    「すまない。待たせたな」
    「いいぜ。Legendersの仕事の話なんだろ? アネさん方の仕事を邪魔するつもりはねぇよ」
     楽屋へ帰ってきた葛之葉へ黒野が笑みを向けると、彼女はわずかに眉根を寄せた。
    「すぐに着替える。待っててくれ」
    「ゆっくりでいいぜ、アネさん」
    「ありがとな」
     葛之葉はハンガーに掛けていた私服を手に取り、更衣室へ入った。黒野は手元の携帯電話へ視線を落とし、操作するフリをしながら更衣室から聞こえてくる衣擦れの音を聞いていた。
     ドキドキする。一緒に着替えている時はそんなことを考えなかったのに、葛之葉が着替えている音を聞いているだけで顔が熱くなるのが分かる。我ながら気持ちが悪いと、黒野は汗が滲む手を握りしめた。
     やがて更衣室のカーテンが端へ寄せられる音がして、黒野は安堵の息を吐いた。「待たせたな」と言う葛之葉に、黒野は首を左右に振る。
    「黒野、この後の予定は? 何もないなら真っ直ぐ駅まで送ってやろうか」
    「朱雀と事務所で待ち合わせているんだ」
    「なら事務所まで送ってやろう」
    「ありがとう、雨彦アネさん」
     2人は自分の荷物を持って楽屋を出る。駐車場まで降りると、入り口の近くに見知った軽トラが停められていた。葛之葉が軽トラの鍵をあける。葛之葉が車に乗るのを見てから、黒野もお邪魔しますと頭を下げて車に乗り込んだ。
     軽トラはいくらか手順を踏み、テレビ局を出る。
    黒野はプロデューサー宛に、無事に葛之葉との撮影が終わった旨を連絡した。すぐにプロデューサーから同行できなかったことについての謝罪と労いのメッセージが返ってくる。『ここ最近Legendersへの仕事が増えてきているので、しばらく黒野さんと葛之葉さんとの仕事が少なくなるかもしれません』『そもそも私がアネさんに無理を言って始めたんだ。それにユニットの仕事を優先させることは当然だ。番長さんが気にすることじゃねぇ』『ありがとうございます。葛之葉さんにも伝えておきますね』黒野はしばらく悩んでから、『アネさんには私からも言っておく。番長さん、気遣いありがとうな』と返信した。
     葛之葉は信号が赤になったのを見て、軽トラを停める。黒野が携帯を鞄の中へ直すのを待ってから話しかけた。
    「プロデューサーは何か言っていたかい?」
    「仕事お疲れ様って。あと、しばらくLegendersと神速一魂の仕事を優先させるから2人での仕事は少なくなるってさ」
    「そうか」
     信号が青になったので、葛之葉は軽トラを走らせ始める。
    「お前さんとの仕事は楽しいから、しばらく我慢だな」
     黒野は葛之葉の言葉に何か返そうとして、なんと言って良いか分からずに口を閉じた。「私もアネさんと一緒に仕事ができて嬉しい」と気の利いた言葉を返せれば良かったのだが、そうはいかなかった。
     一方、葛之葉は黒野も仕事を楽しみにしてくれていればいいと口元を緩めた。
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