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    ひなげし

    @sleepwhitepoppy

    全消しを免れた文字達を置いておきます。

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    ひなげし

    DONE自鬼小説。狂ヒナの過去編を書かせて頂きました。
    自鬼小説『あの日』 幼い頃から、父親が嫌いだった。家族を、母を、妹を傷付けるあのけたたましい音が私を内側から壊すので、布団をすっぽり被っては早く夢を見せてくれと懇願したものだ。お花畑の楽園、私が頻繁に見るのは鮮やかな花々に囲まれながら誰にも邪魔されず静かに読書をする夢。心の拠り所だった。唯一安らげる場所だったのに、日夜続く罵詈雑言と繰り返される暴力でいつしか夢を見る事は疎か、眠る事さえ出来なくなってしまった。息を吸い込む度に打たれた肋骨が軋んで激痛を伴う。目の前で髪を引っ掴まれ投げ飛ばされる妹に、ぷつん、何かが切れる音がして気付いたらその怪物の脚に爪を立てて自分の物とは思えない叫び声を上げていた。腹を蹴られ胃液をぶち撒けながら誓う、こいつを呪い殺してやるんだと。金切り声の頭痛で、脳裏にとある胡散臭い話が蘇る。昔読んだ本に記されていた、呪術師達が密かに暮らしているというその村は、表向きは平凡であって誰でも辿り着けるが深入りすると二度と戻れない呪われた場所、数多くの理解し難い超常現象が起こるそうだ。精神的にも肉体的にも疲弊していた私にとって、そんなのはどうでも良くって唯呪いが存在しているか否かが最も重要だった。
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    ひなげし

    DONE自鬼小説。白ちゃんとヒナギクの出会いのお話を書かせて頂きました。
    ※間接的ですが魘夢さん出てきますので、ご注意下さい。
    自鬼小説『猫に愛情、花冠』 忘れかけていた感覚。柔らかくって愛しくって、触れたらきっと逃げられちゃう。




    鬼である私の毎日は、特に変わり映えもせず繰り返す。夜が更けたら獲物を狩って花を咲かせて、偶にやって来る魘夢さんの相手をして。行為が終われば意識を手放し、引き戻し、何だかやけに身体が疲れていたり目覚めるまでの時間もまちまちだったり。辻褄の合わない事が増えたけれど、特段気にも留めず過ごしていた。今夜もまた、徒花を芽吹かせて満足気に苗床へと変えていた時だった。

    「あー! 待って! どこ行くのー!?」

    鈴を転がしたような女の子の声がする。
    花の間を縫って黒っぽい何かが素早く通り過ぎたので、前後左右を確認し神経を研ぎ澄ませ敵襲に備える。いつ脅威が降り掛かってもおかしくないのは身を持って知っているから。いつだったか、今のような獲物を仕留めて一番気の緩んだ時、鬼狩りに背後を取られ死に掛けた事がある。付け狙って機会を伺っていたのだろう、咲いた人間を手折るまさにその時、振り翳される刃に反応が一歩遅れた。あの日輪刀がひやりと頸椎を掠める感覚、今でも思い出しては身震いする。
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    ひなげし

    DONEキメ学軸の自鬼小説。以前、相互様が描いて下さったイラストを基に放課後の他愛ないお話を書かせて頂きました。狂蠱ちゃん、むら鬼ちゃん、そしてヒナギクの日常。
    キメ学自鬼小説 『放課後アソーテッドスノー』 ──ゴールド、グリーン、ピンクとアクア。キャンバス疾る平行線、交差するのは角を曲がったあのお店。




     普段の授業なんてものは正直、まともに受けたためしがない。頭の中で、執筆中の構想を練りながら適当にやり過ごす。窓際の一番最後の席。考え事をするにはもってこいのこの席で、学生らしからぬ不健全な妄想を企て頭に花を咲かせる。締切も近いし、早く仕上げなければならない。そんな様子に気付いたのか、先生が時折指名して来るけれど何ら問題はない。文字を考えるのが私の仕事のようなものだから、黒板の問いを読み解いて上手く言葉を紡げば良い。今日も悔しそうに着席を促す先生の顔を、内心嘲笑してやりながらスカートを整えつつ席に座る。この下らない授業が終われば、やっと自由の身だ。やっと本当の私になれる。窓の外を見ると、グラウンドが白く染まって銀色の非日常があった。年に数回、降るか降らないかの土地柄だから物珍しさに視線が勝手に吸い取られていく。幸いにも、しんしんと降り積もる雪は止んで何とか放課後集まれそうだ。ホームルームで担任が「足元に気を付けるように」なんて当たり前の事を言う。もう少しまともな言葉を考えられないのか、いや、仮にそうだとしたらこんな職には就いていないか。悪態を吐いて相変わらず窓の外を眺めていると思いの外暇潰しになったらしい、チャイムが鳴って生徒達が一斉に下校し始めた。読み掛けの本を机から引っ張り出して鞄に入れながら席を立つ。コートを羽織ってマフラーを巻いていたらクラスの女子数人に、お茶でもどうかと誘われた。生憎今日は先客が居る、こんな雪の中でも会いに行きたい程の先客なのだ。目の前の彼女達には悪いけれど丁重にお断りし、いつになるのやら分からない“また今度”をして教室を後にする。冷え込んだ廊下は、普段よりも賑わっていて歩きづらい。部活動のバックを背負った生徒がチラホラ見えて、成る程流石にあのグラウンドでは中止になったのだと悟る。一階の下駄箱まで辿り着き、自分の扉を開けると色取り取りにラッピングされたお菓子やら雑貨やらが御出ましになって中々靴を取らせてくれない。
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    ひなげし

    DONE自鬼小説。狂ヒナで書かせて頂きました。
    狂蠱様とヒナギクの出会いから、合わせ技(混成血鬼術)が生まれるまでのお話。
    ※前半、魘夢さん出てきます。後半、狂ヒナでかなり触れていますのでご注意下さい。
    自鬼小説『重なり』 いつか崩れていくとしても、重なり合う、僅かに開いた隙間から。




    「ねえ」
    いつもの声が聞こえて振り返る。
    私は相変わらず霊園で出会した餌を苗床にして、のらりくらり喰い繋いでいた。自分の狩場でも無い癖に。
    「あら、魘夢さん。私の元にいらっしゃるという事は、御身体が寂しいのかしら?」
    「…………お前は本当に頭の中がお花畑で愚かだねぇ。違うよ。今日はお願いがあって此処に来たんだ」
    普段ならば、特訓と称して媾い合う頃だ。
    私は他の鬼とは少し事情が違っている。鬼の長であり全ての始まり、“あの方”から直々に血を戴いてはいない。“あの方”の寵を受ける鬼は特別に配下を作る事を許されており、配下にされた者は術や容貌、仕草や考え方に至るまで主であるその鬼に与えられる事となる。上弦の鬼であれば自身の血を一時的に“あの方”の血へと昇華出来るが、それ以外の階級の低い鬼は不可能な為、人間に直接そのまま流し込むのだ。それは言ってしまえば、“あの方”の血が極端に薄く支配される範囲もごく僅か、それ故に主である鬼は配下に対して自身の嗜好を一定量植え付ける事が出来る。但し、鬼としての力も脆弱だから各々特訓が必要なのである。
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