N/T2 R 800GIL 前編 森の都、グリダニア――。
静謐な黒衣の森の中に現れるその街は、ウルダハとは違い草木と花の香りに包まれていた。穏やかな気候、そしてゆったりと流れる小川。鳥たちが小枝で囁き合い、人々は柔らかなそよ風に頬を撫でられながら、静かな時を過ごしている。
同じエオルゼアにあって、随分違うものだ。ザルはそんなことを考えて気を紛らわせていた。隣に立つナルも「おお、なんとも……なんともこう、そう、なんとも……森だな!」と無駄に元気良く、何の感想にもなっていない事を言っている。共感しているのだから仕方ない。
そう、二人は今、謎の「気まずさ」に支配されていたのだ。
今はウルダハで生殖行為を試した翌々日にあたる。翌日、つまり昨日は、朝目が覚めると肉の身体は悲鳴を上げるほど痛みを訴え、二人してベッドで寝込んでいたのだ。おまけにぴっとり引っ付いて呻きながら寝ていたもので、何かを考える余力も無かったのだが。
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