傘 授業が終わってすぐに帰るべきだった。そそくさと帰ろうとしたところ、教師に声をかけられ立ち止まってしまったのが運の尽き。大した内容でも無いことを聞かれたりしている間に、すっかり他の生徒はいなくなって、帰りに誰かに遭遇する可能性が減ったのはありがたかったけれど、その代わり雨が降り始めていた。
傘なんて持ってくるタイプではない。小雨、とは言い難い雨量にどうするかと暗い空を眺めて、一つ溜息を吐くとパーカーの中にタブレットをしまい、フードを被って小走りに駆け出す。
屋根のあるところを伝い、それでも途切れたところは濡れて走って、それで疲れて休んでしていたら、随分時間もかかる。何度かそれを繰り返し、建物の屋根の下で雨宿りしながら、この雨やまないのかな、とタブレットを取り出し雨雲レーダーでも確認しようとした時のことである。
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