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    岩藤美流

    @vialif13

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    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ③です。頂いた歌は「甘さひかえめ」でした。自分なりにウンウン考えてみたのですが、あまりにも歌詞の世界観が完成していて、おおんどうしたらよいのだ!! このエモをどうしたら!!!! ってなりました! よい歌をありがとうございます!
    あとタイトルが色んなことにかかってることに後で気付きました。
    モノクローム


     とんでもなく気まずいタイミングで、チェスというポピュラーなゲームをしようと言い出したのは、アズールのほうだ。計算を得意とする彼がそのゲームでの対戦を望むのは道理である。イデアは少し悩んだけれど、その誘いを受けることにした。
     イデアも論理を主体とするゲームが不得手というわけではない。当然、お互いがお互いの手の内を読み、裏を探り、そのまた裏に思考を巡らせ――その戦いは随分と長いものになっていた。
     戦いも佳境に入った頃には、部室には二人の姿しかなくなり、日が暮れ始めた教室は暗くなっている。見回りの教師が来るまでには退散しなくては、と思うものの、アズールが深い熟考から帰って来ない。
     彼は腕を組み、顎に手をやってじっとじっとチェス盤の上を見ている。次はアズールの番で、長い長い待ち時間が続いている。しかし、流石に教室が暗い。自分の青々とした炎ばかりが眩しいのは、あまり愉快なことではなかった。
     ごそり、と席を立って、部屋の明かりを灯しに行く。ぽう、と部屋が照らし出されると、カーテンの閉められていない窓には、二人の姿が映った。
     その美しい猫のような横顔を晒して、アズールは 3719

    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ②です。頂いた歌は「売春」でした。
    すっごい考えたんですけど、このなんというか共犯性の有る関係ってほんとあずいでちゃんぽいなあ、って思いつつ、体を売ったほうがあずにゃんだったらどうなるかな~、と考えたらこうなった感じです。しかし私の中でやっぱり二人で破滅するイメージというより二人でこれからの未来につながるレールをぶっ壊すタイプではないかなあと思っています……!
    あやまち



    「ごめん、ごめんね、ごめん……」
     青い炎のような美しい髪ごと、顔を覆って。イデアさんは酷く泣いていた。かすれた声は壊れたように謝罪を繰り返していて、それを僕は、ただぼうっと見ている。
     この人は先程、僕の体を性欲の捌け口にした。こう言うと、誤解を招くかもしれない。正確には、嘘をついて僕の体を愛撫したのだ。
     彼の部屋に招かれて。長い時間、一緒にゲームをした。イデアさんはいつものように、僕には軽口を叩いて、それに応じる間にすっかり夜が更けて。眠気がやんわりと全身を包み始めた頃、彼が言った。
     陸では、親愛の印にキスをするんだよ。
     なるほど、それ自体は間違っていない。彼は親愛の証として僕を部屋に招き、長い時間を共に過ごして、ついに僕を抱きしめ、キスをしたのだ。けれど、親愛のキスは、唇同士を合わせるものではないし、ましてや舌を絡めるものでもない。この賢くて愚かで愛らしい人は、僕がそんなことも知らない、無知な人魚とでも思っていたのだろうか。
     純潔に夢見すぎでしょう。彼だって、他人にならそう言いそうなものなのに、自分の事になると少しもわからなくなるようで。そして僕はその過ち 1399

    岩藤美流

    DONE歌詞から着想を得て書くシリーズ①であり、ワンライの「さようなら、出会い」お題作品の続きです。参考にした歌は「A Love Suicide」です。和訳歌詞から色々考えてたんですけど、どうも予想通りタイトルは和訳すると心中だったようですが、あずいでちゃんはきっと心中とかする関係性じゃないし、どっちもヤンヤンだからなんとかなりそうだよな、と思ったらハッピーエンドの神様がゴリ押しました。イグニハイド寮は彼そのものの内面のように、薄暗く深い。青い炎の照らしだす世界は静かで、深海や、その片隅の岩陰に置かれた蛸壺の中にも少し似ている気がした。冥府をモチーフとしたなら、太陽の明かりも遠く海流も淀んだあの海底に近いのも当然かもしれない。どちらも時が止まり、死が寄り添っていることに変わりはないのだから。
     さて、ここに来るのは初めてだからどうしたものか。寮まで来たものの、人通りが無い。以前イデアが、うちの寮生は皆拙者みたいなもんでござるよ、と呟いていた。特別な用でもなければ出歩くこともないのかもしれない。さて、寮長の部屋といえばもっとも奥まっている場所か、高い場所か、あるいは入口かもしれないが、捜し歩くには広い。どうしたものかと考えていると、「あれっ」と甲高い声がかけられた。
     見れば、イデアの『弟』である、オルトの姿が有る。
    「アズール・アーシェングロットさん! こんばんは! こんな時間にどうしたの?」
     その言葉にアズールは、はたと現在の時刻について考えた。ここまで来るのに頭がいっぱいだったし、この建物が酷く暗いから失念していたけれど、夜も更けているのではないだろうか。
    「こ 5991