眠り姫 深夜に差し掛かり、ルシファーの部屋の窓からネオンカラーに染まりきった街が見えた。多くの罪人や悪魔達が夜更かしをして遊び回っている。私は暫くその景色を眺め、窓に背を向けてベッドの方へ歩いた。
ベッド脇に置かれた椅子に腰掛けて頬杖をつく。視線を下にやれば、ベッドの上でルシファーが死んだように眠っていた。わずかに揺れる胸のみが、ルシファーの生を証明している。私はルシファーの白い頰に触れた。温かくも冷たくもない、無機物のようだった。
ルシファーが目を覚まさなくなってからもう三ヶ月は経っていた。原因は分からない。ある日から急に起きなくなって、それからずっと眠り続けている。
ホテルの住民達は私とアラスターを除き、皆その状態のルシファーを案じた。ありとあらゆる手を使い覚醒させようと躍起になったが、ルシファーは手をピクリと震わすことすらしない。瞼の下に赤い瞳を隠したままだった。
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