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    ししるい

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    ししるい

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    可哀想で可愛いなと思っている🍎×そんな彼を愛し縋っている🎸の🍎🎸

    「るし、るしふぁー。はやく、おねがい、たすけて」

     深夜、自分の部屋で椅子に腰掛けアヒルを作っていると、扉がバンと開かれ、アダムが足をふらつかせながら入ってきた。彼は私の前に来て蹲り、私の袖をぎゅっと縋るように掴んだ。今にも泣きそうな目でこちらを見ている。私はその愛らしい姿に思わず笑いそうになったが、唇を噛んで我慢して、ブルブル震える彼の背中をさすった。

    「どうした?また怖い夢でも見たか」

    「りゅーと、りゅ、と、が、しねって、だてんしめって。わたし、りゅーとに、やだ、こんな、みないで、くるしい、こわい」

    「アダ厶、大丈夫だ。私がいるじゃないか」

     アダ厶の周りを羽で囲って、耳元で囁く。そして両手で彼の顔を包み、金色の瞳をじっと見つめた。彼のゆらゆら揺れる目に、私の姿が反射している。早く楽にしてやろう。
     
     自分の手に力を込めて、彼の頭の中にいるリュートを捕まえて握りつぶしてやる。幻の彼女はうめき声を上げて抵抗してくるので、より大きな力を加えてみれば、彼女はだんだん大人しくなっていった。最後に彼女の首を飛ばし、残った胴体を叩きつける。そうしたら、彼女は完全に動かなくなった。あとは残った遺体を消し去れば、アダムはもう二度と彼女を思い出すことは出来なくなる。しかし、私はあえてそうしなかった。

     私はアダムの顔から手を離して、彼の頭をポンポンと叩いた。彼は目を細め、口角を上げながらも、真珠のような涙をこぼしている。あんなに怖がっていたのに、部下の死を悲しんでいるのだろうか。

    「ほら、あの怖い女は消えたぞ。安心しろ」

    「ルシファー……ありがと」

     アダ厶は私の指先にキスを落とし、頬ずりをする。彼の温かい体温が私に伝わってきて、二人の境界線が曖昧になっていくのを感じた。しばらくの間彼が私の手をいじる様子を眺めていると、彼が手に指を絡め、茜色の目を向けてきた。

    「なあ、まだ少しだけ怖い、かも。だから……」

     その先の言葉は紡がれなかったが、ベッドをチラチラ見ながら私の手を引っぱるので、アダ厶の求めることが何かは分かった。けれど私は、彼の口から一緒に寝たいという言葉を聞きたかった。だから、彼が何をして欲しいのか検討もつかないという風に首をかしげてみせた。

    「だから?」

     アダムは目を大きく開いたあと、私を睨みつけて舌打ちをした。潤んだ瞳でそうされても怖いはずがない。涙で覆われた目はまるで飴玉のようで、甘い匂いが漂ってきた。あまりにも美味しそうだから今すぐに食べてしまいたいが、そうすると胃の中で溶けて消えてしまうだろう。それは惜しい。

     口の中で溢れそうになる唾液を飲み込んだとき、足元に座っていたアダムが膝立ちになって、私の首に手を回した。それから私の肩に顎を置き、小さな声で言った。
     
    「わかってんだろ……私が言いたいこと」

     バッとアダ厶の方を向くと、彼は頬を染めて甘い視線を送っていた。

    「ふ、あはは!私の負けだ!アダ厶」

     私は彼を姫抱きにして、ベッドへゆっくりと運んだ。彼は急に持ち上げられたことにびくりと驚きつつも、私の頭を抱いて大人しくしていた。

     アダ厶をベッドの上におろして、私も彼の隣で横になる。お互いの方を向いて見つめ合った。彼の手を握り顔を近づけると、彼は目を閉じて私の口にキスをした。何度も何度も唇を重ね、二人が満足して止める頃には、既に深夜という時間は過ぎて、早朝になりかけていた。

     アダムは眠たそうな顔でぼんやりとしていたので、彼の瞼付近を撫でて、寝るように促した。彼は素直に応じて、寝息をたてる。私は彼の額に触れて、彼の中でバラバラになっているリュートの体を元通りに直した。何時間かすれば、再び彼女は動き出し、彼を罵りだすだろう。そうなればまた彼はここに来て泣きつき、私の心を癒やすに違いない。

    「楽しみだな」

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