am4:16 極々微かなカードキーの開錠音。浅く微睡の中を揺蕩っていた意識がゆるりと浮上した。続いて玄関の扉が音をたてぬ様、慎重に開けられる。空気でわかる。恋人で同居人である郭嘉の帰宅だ。
(――今、何時でしょうか)
枕もとのサイドボードに置いている時計をぼんやりと確認すると、AM4時過ぎ。ほぼ朝帰りと言ってもいい時刻だが、まだ夜の帳は重く降りたままで朝の気配は感じられない。愛する人の無事の帰宅に安堵しながら、それでも起きて出迎えるまでもなく心地よい布団の温もりに寄り添う。静かに扉を開ける音と聞き慣れた足音が近づいてきた。
「荀彧殿」
ただいま、溜息の様な空気を多分に含んだ声と共に、先程までの静かな挙動は何処へやら、くるまっている布団ごと無遠慮に抱きしめられる。華奢な金の髪が廊下から届くにぶい常夜灯の灯にチカリと反射するのがやけに眩しく目に入った。喧噪の匂いのこびりついた彼はまだ上着すら脱いでいないようで、革のジャンパーの分厚く冷たいごわついた感触を感じる。
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