君の匂い「そーちゃん先輩」
「わっ」
振り向きざま、ぽた、と自分の顎から滴が落ちた。タオルで急いで顔を拭き、顔を上げる。
「環くん」
「おつかれ」
「うん。君もね」
「さっきの障害物競走、見てた。ぶっちぎりで一着だったじゃん。最後の飴探すやつとか、迷いなく顔突っ込んでたよな。かっこよくて惚れ直した」
「……ありがとう。まだ優勝が狙える点差だから、頑張らなきゃって思って……」
「粉、落ちた? ちゃんと洗わないと痒くなるって聞いたけど」
「大丈夫。しっかり洗ったよ」
「そっか」
見られてたのか。恥ずかしいな。うん、と頷いて、その手に握られたものに気付く。
「そのタオル……わざわざ持ってきてくれたの?」
「……違う。たまたま持ってたの」
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