「すぐるくーん、ご指名だよ」
店長の呼ぶ声に軽い頭痛を覚えて、額に指を押し当てる。
「店長、何度も言いましたけど、私はこの店にホールスタッフとして雇われたはずですが?」
「まあまあ、そう言わずに。太客だからさー、ね、その分の手当てはちゃんと出すから」
深くため息をつき、指定された席に向かう。
「あ、すぐるくーん! おっそーい!」
顎に両手の握り拳を当てて、上目遣い。かわい子ぶった仕草で見上げてくるこの男、五条悟。
初めて見た時、こんな場末のキャバクラに似つかわしくない、その美しい姿に目を奪われた。
紫がかった白髪、不思議な虹彩の青い瞳、嘘みたいに整った顔、彫刻のように均整のとれた長身、モデルや芸能人というより、別の世界の生き物のような美貌だった。
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