きみのてをとる「あーっ」
間の抜けた悲鳴、のようなものがどさりと降ってきた。
「…何だよ?」
ソファの背もたれからのけ反って聞き慣れた声の主を仰ぎ見ると、案の定暁人がいつもの“呆れた”という顔でこちらを見下ろしていた。眉間のシワが深い。これは来るぞ、と思う間もなく、
「駄目だよKK、それそのままにしちゃ!いつも言ってるじゃん!」
鋭く小言を発すると相変わらずの素早い動きでオレの目の前まで大股に歩み寄り、膝をつく。目線がかち合う。怒ったような拗ねたような、見飽きたほど見た茶色の目がこちらを睨み付けていた。
元々吊りがちの目が更に吊り上がり、威嚇する猫を想起させた。思わず少しばかり怯む。コイツはこうなったら退くということを知らない、というのもあるが。
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