何度だって教えてオレ、はじめてだからいいとことかよく分からないしちゃんと教えてね、と楽しそうに言われて瞬きを数回。辛党のこいつの口から甘さを含んだ声色でそんな言葉を貰い受けるなんて少し前には思いもしなかった。ベッドの上で向かい合わせの俺達は今日"初めて"そういうことをするつもりでいる。
「初めてって、ほんとうに初めてってことか」
「えー。それ聞いちゃうの」
正直どうでもいいことを聞いてしまったと言った途端に後悔した。ケイトが気を遣ってなにかを話してくれたとして俺が勝手に思わぬ所で傷ついてしまうかもしれないというのに。
「……これで勘弁してくれない?」
しかしそれは杞憂だったというか、手首を掴まれたかと思えばそれは胸元に持っていかれて、手のひらに握らされた心音は部屋着のシャツ越しにどくどくと煩い位響いていた。
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