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    おいなりさん

    カスミさん……☺️

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    おいなりさん

    DOODLEソテスミ何かを思い付いたような顔をしたソテツの傍には近付くな、と、確か祖父に言われていた気がする。なので、やたら纏わりつくような視線を感じたとしても、それはきっと気のせいだし、そうじゃなかったとしても、絶対関わってはいけない。
    影を伝い歩き、人の背に身を潜め、限りなく気配を消して。そして、そしてーー。
    「はい、残念でした」
    何故、今自分はソテツに壁ドンされてるんだろうか……。絶対に気付かれていない筈だったのに。
    「いくら気配消してようが、何処に行くかくらいは検討が付くだろ、普通」
    なるほど、待ち伏せ、だったのか……。がくりと項垂れて、悔しさに唇を噛む。すると頭上からはそれはそれは愉しくて仕方ないというのような声が降って来た。
    「で、追いかけっこの報酬は?」
    「そんなもの、ないッス」
    「そういう訳にはいかんだろ?散々俺の時間を奪っておいて」
    「何の事ッスか。自分は普通に仕事してただけッスよ」
    「なるほど、ねぇ」
    顔を見なくてもわかる。ソテツの口角は今ニヤリと吊り上がっている、絶対に。背筋にゾワリと嫌な震えが走り、どうにか逃げられそうな道へズリズリと体をずらしてみたものの、直ぐにガツンと股の下辺り 647

    おいなりさん

    DOODLEケイスミまるであの男には心が読まれているような、そんな気分にさせられる時がある、とケイは頬杖を突いていた。
    何となく気が沈む、今日はケイにとってそういう日だった。
    開店前のスターレス、その奥にある、バーカウンター。
    的確な指示と入念なチェックで店の開店準備はもう終わり、後は時間が来れば店を開けるだけという、特に何をする事もない時間。
    瞬きをする間に終わってしまうその刹那が、唯一、というのは大袈裟かも知れないが、ケイにとってはそれに等しい、気の休まる時だった。
    今日は珍しく、暇を持て余せば暴れるようなキャストも居ない。
    ただただ静かなその時を、瞼を閉じてじっとしていると、左の方から控え目にグラスを置く音が聞こえて来た。
    少しだけ顔を音のした方へ傾け、瞼を薄ら持ち上げてみると、そこには少しだけ緊張した面持ちのカスミがグラスをケイの方へ差し出している所だった。
    ーーほら、こうして音もなく、必要な時に現れる。
    「あー……、もしかしてお邪魔でしたかね」
    罰の悪そうに頬をポリポリと掻くカスミに、ケイは問題ないというように軽く首を振った。
    「良かったら、一杯どうッスか」
    逆三角形のグラスに透き通った赤褐色が 1249