月を蝕む月を蝕む
「今日、月蝕があるらしいッスよ」
朝起きると、狭いベッドの中で隣に寝転んでいるカスミがスマホを弄りながらそう言った。
これって、いっしょに見に行きたいってことなのかな。
長い前髪がカスミの表情を隠してしまっているせいでコトバの意味を上手くつかめない。
もちろんおれはいっしょに行きたい、けど。
「カスミは、月蝕見に行くの?」
「そうッスね〜。うーん、でも、この時間だと仕事が終わるかどうかわかんないッスね」
「そっかぁ」
しょぼん。
期待でふくらんでた気持ちがそんな音を立ててしぼんだ気がした。
ととと、とカスミがスマホをタップする。
何か返信が来たみたいだけど、それを確認したらすぐに画面をオフにしてスマホを枕の上の方に放ってしまった。
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