「……猫、か」
「わ!」
奈々子さんから送られてきていたカルピンの写真を眺めていると、突然上の方から声がした。驚きながら見上げると、一軍の高校生が立っている。名前はなんだったかな。確か、跡部さん達と試合をしていた、サーブが早い人。
「……ちっす」
一応先輩だし、と軽く帽子をずらして、何の用だろうかといやに高い位置にある顔を見上げる。しかし、しばらく待ってみても、この人は無言で立ち続けているだけだった。
「あの……猫、好きなんすか」
痺れを切らしてそう尋ねる。またしばらく無言で時が過ぎ去った後に、ようやくその人は二言目を発した。
「さして興味はない、が……俺の家にも猫がいる」
「へぇ」
見せてくださいよ、とせがんでみると、黙ったままに携帯を取り出していた。この人が持っていると、携帯もいやに小さく見える。しばらく何やら操作をした後に、俺に向かってそれが差し出された。
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