曇天、霹靂。嵐と晴間 いつだって、死んでこいと言われ続けていた。
湿る夏の、帳も降り切って星も霞んで見える深い夜。数人分の足音が慌ただしく路地裏を打ち鳴らす。時折肉を打つ音、引き金を引いた後の音、肉を裂く音が混ざり合って嫌な余韻を残す。この町でその手の稼業の者達が起こす静かな抗争。表通りから一本奥、そこで繰り広げられる血で血を洗う争いに気付く者は多くない。
政もそんな路地裏で鎬を削る内の一人だ。先陣切って敵対する群れの中に突っ込んでいく、所謂鉄砲玉と言う名前の付いた捨て駒。居ても居なくても構わないそんな存在。けれど、それに抗うかのように毎度生きて帰ってくるものだから、最初は素直に死んでおけと恫喝していた組の人間も次第に気味悪がって血塗れ、傷だらけで戻ってくる政に声をかける者はいなくなった。
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